視覚障害の定義と分類
視覚障害とは、目による情報の取得に困難を抱える状態を指します。視覚障害という言葉を聞いたとき、「全く目が見えない状態」を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、視覚障害者のすべてが全く見えないわけではありません。
実際には、視覚障害には程度の違いがあります。全く見えない「全盲」に対して、わずかに見える「ロービジョン」と呼ばれる状態の人も多く含まれます。そのため、近年では視覚障害者を「見えない・見えにくい」人と表現することがあります。
視覚障害の判定においては、単に視力が低いかどうかだけでなく、視野の広さも重要な要素となります。視力と視野の両方を総合して、障害の程度や支援の必要性が判断されます。
視力と視野の関係
視力とは、物の形や文字をどの程度はっきり見ることができるかを示す指標です。一般に「0.1」や「1.0」といった数字で表され、数値が高いほどはっきりと物が見える状態を示します。
一方で、視野は目の前の1点を見つめたときに、周囲にどれだけの範囲が見えているかを示します。視野が狭くなると、視力が高くても周囲の情報が把握しにくくなるため、日常生活に大きな影響を及ぼします。
視覚障害の診断や福祉制度においては、視力と視野の両方を合わせて評価することが重要です。視力だけでは見え方の困難さを正確に把握できない場合があるためです。
全盲とロービジョンの中間分類
全盲とは、光すら感じることができない状態を指すことがありますが、実際にはいくつかの段階があります。「全盲」とされる人の中にも、光の有無や動きだけを感じ取れる場合があります。
そのような中間的な見え方を示す分類として、「光覚弁」「手動弁」「指動弁」といった用語が用いられます。光覚弁は、光を感じることができる程度の見え方を指します。手動弁や指動弁は、手や指の動きがわかる程度の視覚を持つ状態を表します。
このような分類は、全盲とロービジョンの中間に位置づけられ、視覚情報の受け取り方や支援の内容を考える上で役立ちます。見え方には個人差があるため、細かい分類を行うことで、より適切な支援が可能になります。
見えにくさの多様性とその誤解
見えにくいという表現が使われると、多くの人は「視力が低い」というイメージを持ちます。しかし、視覚障害は視力の低下だけではなく、視野の狭さや明暗の区別の困難さなど、さまざまな要因によって生じます。
ロービジョンの人々の中には、中心が見えない、または逆に中心だけが見えるというケースもあります。このような見え方は、周囲の人からは一見して分かりにくいため、理解が得にくいこともあります。
視覚障害を理解するためには、「見えにくさ」の具体的な状態を知ることが大切です。単に視力の数値だけで判断せず、どのような状況で見えにくさを感じているのかを丁寧に確認する必要があります。